図書館の帰り道
今日は休日で、いつものように近所の図書館まで歩いて行ってきた。毎度毎度、読み切れない冊数の本を借りて、ざっと目を通しはするものの、何かが自分に刻印された思いもしないままに、次から次に本を借りている。
帰り道の途中、10年、いや20年来同じような作家の、同じような主題の周辺をうろうろとしながら、「かじった本の数だけ増えて、自分には積み上げたものは何もない」という“つまらない考え”にとらわれ始めた。そして、普段の自分の振るまいが、どれもこれもその場しのぎで、何の考えも信念もないものの集積であることがはっきりと感じられてきた。そうやって、うかうか歳だけ取ってしまった、と、げんなりした。
「まあ、それならそれで、いいではないか」と思いながら、図書館で読んだ今日付の読売新聞の記事を思い出した。
作家の角田光代が、デビュー後の2作目となる作品を、編集者から指摘され何度も何度も書き直したという話。
もし、自分がその編集者だったら、一度くらい書き直しをさせたら、「まあ、これくらいでいいんじゃないですか?」とさっさと単行本にしてしまうのではあるまいか。そう思った。それで、「どうせやるんなら、これからはちゃんとやらなくては」と殊勝なことを考えた。
そう思うと、少しいい気分になってきた。
けれども歩いているうちに、いい気分は次第に薄れ、うかうかしていると、そう思ったことすらすぐに忘れてしまう、そう思った。