ram’s blog

本と映画と絵画をこよなく愛する日々の記録

『贖罪』読了/末井昭『自殺会議』

やっとイアン・マキューアンの『贖罪』を読み終えました。このところ短編小説や新書ばかり読んでいたので、久しぶりにじっくり小説を読んだ気がします。

ちょっと感想

 

 正直言って、第一部は退屈で冗長だと感じ、やや苦痛でさえありましたが、ところどころ甘美な部分はくっきり心に残っています。

第二部は独立した一つの作品と言っていいくらい迫真性があります。そうやって考えれば、第一部のあのくどくどしい描写も、それはそれで味わい深いと言えます。

最後に待ち構えている、何か大きなカタルシスというべきものはありません。

ただ、この作品の成立同様、ためつすがめつ眺められた過去の過ちや、起こりえたかも知れない架空の場面、起こるべきではなかったのに起きたことが重なりあい響きあいしながら、心の中に澱のように溜まっていく気がしました。そしてそれを、読み終えた後に、また割り切れない気持ちを抱えながら、読者の視点からためつすがめつすることに、この小説の醍醐味であるのだと思います。

後年、小説家となった作中人物ブライオニーが、この第一部と第二部を大戦後何度も書き直してきたということが、まさに果たされない「贖罪」への試み、ということになるのでしょう。

 

今朝は、この作品の映画版とは知らず、ずいぶん前に録画してあった「つぐない」のDVDを少しだけ見ました。先に本を読んでおいてよかった、というところです。

 

さて、これからは、昨日本屋で見つけて衝動買いした、末井昭の『自殺会議』を読もうと思います。

 

自殺会議

自殺会議